【ILPT便り】第197回『 我慢する意志と腰痛改善の以外な共通点とは?』

From 赤羽秀徳
 
実は、私は子供のころから”甘い物”が大好きです。

あんころ餅、大福、ケーキ
 
など。
 
でも、最近は時々少し食べるくらいです。なぜなら、それらが体に与える影響を知り、自分でもその影響を「実感」するからです。
 
つまり、
 
短期的にはこころが満たされても、翌日の体調に影響がでることを実感しているということです。【未来予測】ですね。 
 
皆さんはいかがですか?
 
本当は我慢した方が良いと解っていても、ついつい…ということありませんか?

実は、短期的欲求を抑えられるかどうかは、人としての成長にも大きな影響があるようです。
 
その欲求を抑えられる人と抑えられない人の違いって興味ありますか?
 
臨床や日常生活にもきっと役立つ内容なので、良かったら一緒に確認していきませんか?
  

 
◇我慢する意志の研究~マシュマロテスト~
 

 
マシュマロテストという心理学の実験をご存じですか?
 
簡単に言うと、きちんと我慢できる子供は、大人になってから成績が良く、年収も高いというものです。
 
では、どのような実験かをウィキペディアから一部ご紹介します。
 
▼ここから

職員の子どもたちが通う、学内の付属幼稚園の4歳の子ども186人が実験に参加した。
 
被験者である子どもは、気が散るようなものが何もない机と椅子だけの部屋に通され、椅子に座るよう言われる。
 
机の上には皿があり、マシュマロが一個載っている。
 
実験者は「私はちょっと用がある。それはキミにあげるけど、私が戻ってくるまで15分の間食べるのを我慢してたら、マシュマロをもうひとつあげる。私がいない間にそれを食べたら、ふたつ目はなしだよ」と言って部屋を出ていく。

▲ここまで
 
という実験とのこと。
 
いかがですか?
 
皆さんが子供の時のことを思い出してみて、我慢できそうですか?
 
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結果は!
 
我慢できた子供は、1/3ほどであったとのこと。
 
この実験の考察として、我慢できるということは、「自制心」がある子供なので、大人になって成功(成績が良く年収が高い)したということが言われていました。

また、集中力に関係する腹側線条体と前頭前皮質の活動においても、有意な差があったようです。
 
(前頭前皮質は、慢性腰痛を抑えるためにも重要な部位であることは、ILPTベーシックでもお伝えしておりますが、興味ある方は「DLPFC」で検索してみてください。)

 

◇マシュマロテストの再試験の結果は!?

 
 
ところが!!
 
2018年に被験者を900人に増やして再試験が行われ、「マシュマロ実験の結果は限定的」とする実験結果が発表されました。
 
再試験では、被験者の「家庭の年収」といった要素ともあわせて、複合的な分析が行われたようです。
 
その結果は、驚くもので、
 
「2個目のマシュマロを手に入れたかどうか」は被験者の経済的背景と相関が高く、長期的成功の要因としては「2個目のマシュマロを手に入れたかどうか」よりも被験者が経済的に恵まれていたかどうかの方が重要であったとのこと。
 
そして、
 
「2個目のマシュマロ」と長期的な成功は、原因と結果の関係ではなく、経済的背景という一つの原因から導かれた2つの結果であったことが示されたようです。
 
シンプルに言うと、裕福な家庭か否かということの違いということです。裕福さの違いは、未来や社会に対する期待値に差が生じるようです。
 
裕福ではない子供は、明日は食べ物がもらえないかも、などいう危険を感じ、長期的な報酬を待てないとも解釈できるようです。
 
ここが、ポイントですね。
 
実験において、裕福でない子供は、不必要な危険を感じており、その子供の【未来予測】は、「安心・安全」ではなく「危険・恐怖」になっていたと言えるでしょう。
 


◇恐怖回避思考という共通点

 
 
これは、慢性腰痛の患者さんにしばしばみられる「恐怖回避思考」と似ているのではないでしょうか。
 
本当は感じなくてもよい長引く痛み。同じ痛みを感じても、楽観的にはなれず、悲観的な解釈をしてしまい、脳が痛みに過敏な状況を作り出してしまいます。その結果、また痛みを感じてしまうという悪循環に陥ってしまします。
 
あるいは、
 
また痛みが出たらどうしようという恐怖から、薬や注射など一時的な鎮痛処置に重点を置いてしまい、【未来予測】が適切に出来ず、自己管理がなかなかできない状態。
 
ということとも一致してきますね。
 
目先の利益よりも、長期的な利益を冷静に判断できると良いですね。
 

◇恐怖回避思考を子供に当てはめると


 
特に、子供は我慢できないこともあるでしょう。冷静に【未来予測」ができないこともあるでしょう。
 
その時、一方的に「我慢しなさい」ではなくて、なぜ我慢できないかと丁寧に理解してあげることが必要ですね。
 
がまんできない本当の理由が解れば、親としても支援できる方法が見えてくるでしょう。
 
最初のマシュマロテストの時にも、なぜ我慢できなかったかを丁寧に子供に聞いていたら、再試験で判明した裕福さの違いも見えてきたかもしれません。
 
きっと、子供も今は手に入らなくても、明日には手に入ると思えれば、危険を感じることなく待てる確率も増えたでしょう。

我慢できないとき、何を恐れているか?その理由は?を、寄り添って確認していきたいですね。

◇本日のまとめ


 
最初のマシュマロ実験では、その子供の社会的背景までは考慮していませんでした。
 
再試験では、その点にも注目されて再試験をしてみた、というプロセスはまさに、腰痛治療においても大切な観点ですね。
 
なぜ、その行動をするのか?
 
こちらは、理解できないこともあるでしょう。
 
しかし、より深くその「ひと」を理解することで、その行動の意味が明確になってきます。
 
人は、少しずつ知識を身に着け、行動習慣を変えていくことで、より健康行動が増えていきます。

ILPTでは、腰痛を切り口に「健康行動」も探究していきます。
  
すべての人の素敵な笑顔のために。
 
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聞きたいことや感想は、気軽にメールでどうぞ。

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対話的腰痛アプローチ 
Interactive Low back Pain Technology(ILPT) 
主宰 赤羽 秀徳 
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