【ILPT便り】第191回 『30分ごとに3分の運動が〇〇に及ぼす絶大な効果とは?』 

デスクワークが多い方で腰痛や肩こりを訴える方の対応に困ることはありませんか?
 
私の経験では、朝9時に仕事を始めて12時まで連続3時間働き続ける、という「習慣」が変えられず、カラダの不調が続いている方もいらっしゃいました。
 
そして、本人はその事に対してあまり深刻には考えていない様子。
 
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今までも時々紹介してきましたが、連続座位時間が長いと様々な心身への弊害があることが、数多く報告されています。

今回は、
 
昨年11月に報告された、オーストラリアン・カトリック大学のFrances Taylor氏らの、2型糖尿病患者を対象に行った研究結果から学びを深めていきましょう。

患者さんや利用者さんの情報提供に、是非ご活用いただければと思います。

◇30分ごとに3分の簡単な筋力運動を行う効果は?


 
では、早速結果です。

「長時間の座位行動が続く時は、30分ごとに3分の簡単な筋力運動を行うと、【血管機能】の有意な改善が期待できる」
 
という結果です。
 
いかがでしょうか?
 
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30分ごとに3分で、“血管機能”改善!
 
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高速道路の運転時の休憩は2時間ごとと言われていますが、今回の結果は「30分ごと」とのこと。ゆとりある計画が必要になりますね。

研究の背景として、
 
「2型糖尿病患者は血管機能が低下していて、心臓病のリスクが高い状態にあることが多い。座位行動を減らし身体活動を増やすことは、血管機能の維持・改善につながり心臓病リスクを抑制する」

とされているが、
 
「交通機関が整備され、テクノロジーの発達により職場や家庭でも身体を動かす機会が減っており、社会そのものが長時間の座位行動を増やす環境に変わってきた」ということが研究の背景。
 
そこで、座位行動中にごく短時間の身体活動を挟むことで、血管機能を改善できないか検討した、
 
ということです。
 
【血管機能】は、本当に大切ですよね。
ちなみに私は、10年ほど前に正規の機器で図った時には、年相応でした。

最近は測定していませんが、さまざまな血管に良い習慣に取組んでいるので、願わくばその時の血管年齢を維持していたい!と思っています。
 
あなたは、血管年齢図っていますか?

◇研究の具体的な方法は?


 
さて、研究の対象や方法をみていきましょう!

・検討の対象:
 
35~70歳の肥満2型糖尿病患者24人
 
・方法:

対象者全員に、以下の3条件で7時間にわたって座位を維持する試験を行い血管機能を検討

・3つの条件:
 
 ●条件1 7時間中断なく座位を保つ
 
 ●条件2 30分ごとに3分間の簡単な筋力運動
  (simple resistance activities;SRA)
 
 ●条件3 1時間ごとに6分間のSRA

 を行うというもの
 
・血管機能の計測:
 
【項目1 大腿動脈の血流依存性血管拡張反応】
(flow-mediated dilation;FMD)
 
 →短時間血流を遮断後、遮断を解除した時に生じる、内皮依存性の血管拡張反応を評価する検査。
 
 血管径がより大きく拡張するほど、血管内皮機能が良好と判定される。
 
【項目2 安静時ずり速度(resting shear rate)】
 
 →安静時ずり速度の値の高さは、血液の粘度が低いことを表す。

・計測時間:
 
1.座位開始時点、
 
2.開始後1時間、
 
3.3.5時間、
 
4.4.5時間、
 
5.6.5~7時間
 
の時点で計測し評価。
 
以上が研究の方法です。
しっかりした手順ですね。
 


◇詳細な結果


 
では、詳細な結果を2点みていきましょう。
 
その1:
 
・7時間にわたるFMD(大腿動脈の血流依存性血管拡張反応)の平均値
 
  条件1(7時間座位を保つ)3.7±0.3%

  条件2(30分ごと3分間のSRAを行う)4.1±0.3%であり、有意差が認められた
(P=0.04)。
 
ただし、
 
 条件3(1時間ごとに6分間のSRAを行う)は、条件1と有意差がなかった。
 
 →ここがポイント!ですね。
 
  FMD(大腿動脈の血流依存性血管拡張反応)は、7時間の座位でも、1時間ごとに6分でも、有意差が無かったということです。
 
  座位で作業していて、1時間連続ですることって普通にありませんか?
 
では、次の詳細な結果です。 
 
その2:

・安静時ずり速度
 
 条件1の33.1±4.1/秒に対して、

 条件2が45.3±4.1/秒、
 条件3が46.2±4.1/秒であり、

ともに有意差が認められた(条件2、3ともP<0.001)。
 
 →長時間の座位で、血液粘度が高くなっていたということですね。
  ここは、条件2、3は変わらないので、30分と60分の差はあまりなさそうですね。

◇以上の結果からのメッセージ


 
以上の結果から著者は、

「座位行動による血管内皮機能の低下を抑制するには、座位中にそれを中断する頻度が、中断中に行う運動の時間の長さよりも重要である可能性が示唆された」と述べています。

その上で、
 
「2型糖尿病が進行すると血管機能が低下する。
 
 座位時間が長くなりがちな現在の社会生活において、良好な血管機能を維持するために、より頻繁に座位を中断する必要があると考えられる」
 
とまとめています。 

◇具体的な休憩の計画と工夫を!


では、実際に日常生活や仕事上でどのような工夫ができそうですか?
 
すぐに思いつく範囲では、

・家電製品のリモコンを手元に置かない
 
・テレビを見たり、スマフォでメールを読むときは、時々立ちながら行う。

・コマーシャルを見るとき何をするか決めておく。
 
・タイマーを30分にセットしておく
 
などなど、それぞれの生活パターンの中で工夫していただければと思います。
 
【座位を中断 = break 】
 
やることは、シンプルですが、効果は絶大だと感じています。
 
今回お届けしているのは、【休むスキル】と言えるでしょう。
きちんと計画してから休む場合と、何となく休むのでは休んだあとの満足感、幸福感が変わるとされています。
 
何かに取り組む時に、まず、「休む計画」を立てることから始めるのもおススメです。

是非、今後の臨床、私生活にお役に立てていただければ幸いです。

すべての人々のハッピーのために。
 
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聞きたいことや感想は、気軽にメールでどうぞ。

メール:office〇akahalabo.com (〇を@に置き換えてください)
 
参考論文:
 
https://journals.physiology.org/doi/abs/10.1152/ajpheart.00422.2020
 
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対話的腰痛アプローチ 
Interactive Low back Pain Technology(ILPT) 
主宰 赤羽秀徳 
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