【IAIRコラム】 No136『 痛み日記 V.S. 活動日記 』

先日、新千歳空港の出発ロビーで、
待機していた時に、突然
以下の音声が耳に飛び込んできました!

「下り、エスカレーターです」

(2秒程すると)

「下り、エスカレーターです」

(2秒程すると)

「下り、エスカレーターです」

・・

の繰り返し

・・

いや~。びっくりしましたよ。

私が、
その音声に突然「気づいた」のは、
椅子に座って20分程した時
だったので…。

恐らく、一日中流れている音声の様でした。

五感の働き

あなたは、
似たような経験はありませんか?

例えば、

・電車の中で本を読んでいて、
読み終わった途端に電車の
音が聞こえてきた!

・あるときから突然、
部屋の時計の針が動く音が
気になり始めた。

・踏切の遮断機の近くに
住んでいる知人の家に行き
その音が気になるけど、
知人は全然気にならない。

など

これらのことは、
深く考察していくと
ちょっと話が長くなるので、
シンプルに解説すると

五感を通してインプット
されてくる外部の情報の
すべてが知覚されるのではない

ということなります。

現実の世界で起こっていること
すべてを知覚することは出来ず、

その時、
「意識」したり、
「興味」を持ったりしたことなどを

「知覚」している

ということです。

慢性の痛みの評価

 

このことを慢性腰痛のケースで
考えてみましょう。

例えは、

・いつも、腰痛の話をする方

・ある日から、突然腰痛がなくなる方

・痛みの訴えはあるけど、動きは、
スムーズの方

などに接していて、
器質的な問題はあまりない
のではないか、と思うこと
ありませんか?
そのようなケースでは、
腰痛のことを
「意識」しすぎてまう結果、

「知覚」しすぎてしまっている
こともあるかもしれませんね。

もし、そうであれば、
ルーチンに「腰痛の評価」をすることが
逆効果になってしまう可能性があると
思いませんか?

警告

実は、
ルーチンに痛みを評価することを
警告している報告がいくつかあります。

3つ紹介します。

その1:

2001年以降、
疼痛を脈拍・体温・呼吸数・血圧に次ぐ
5番目のバイタルサインとして
日常的に評価しようとする動きがある。

しかし、腰痛疾患を対象とした場合は、
医療の対象化・過剰検査・過剰治療という
悪影響を生じる可能性が高い。

その2:

疼痛を5番目のバイタルサインとして
疼痛スケールで評価すると、
薬の過剰投与に気づかないばかりか
投与不足を過度に強調してしまう。

このバランスの悪さが
鎮静剤と麻薬のさらなる過剰投与を招き、
患者の死亡や活動障害の原因となる。

その3:

疼痛を5番目のバイタルサインとして
日常的に数値化する方法を
がんセンターで採用した結果、

患者の満足度は向上したものの、
オピオイドによる副作用が
2倍以上に増加した。

疼痛を最重要視するのは
患者の生命を危険にさらすことになる。

などの報告があります。

以上の報告から考えても、
疼痛のルーチンな評価は、
慎重に考えるべきかと思います。

疼痛を評価すべきケースは?

 

慢性腰痛で疼痛をルーチンに
評価すべきか否かは、
その方の改善具合をしっかり
評価していけば判断できると思います。

シンプルです。

改善傾向であれば、
今の対応を続ければよいでしょう。

変わらなかったり、
悪化しているようでしたら、
見直しが必要ですね。

継続してもよい事
やめた方がよい事

をきちんと再検討すべきでしょう。

検討していくなかで、
痛みを「意識」しすぎて
痛みの訴えが継続していると
判断した場合は、
 
「痛み日記」などで
ルーチンに評価するのではなく

「活動日記」などで、
痛み意外に「意識」が向く方法で
評価し、支援していくことが
良いかもしれません。

あるいは、

痛みの訴えが長期間続いている
という場合でも

痛みが姿勢や動作により変化することや
日によって変化することに、
「気づいて」ほしいと思うケースは、

「痛み日記」をつけることで、
新たな気づきが
得られるかもしれません。

目的をはっきりさせず、
単に「痛み日記」をつけて
いただく事は避けていきたいですね。

セラピストの「意識」も大切

私が経験した

「下りエルカレーターです」

「下りエスカレーターです」

「下りエスカレーターです」

の例のように
私たちの知覚は「意識」で
刻々と変化していきます。

 

患者さん、利用さんに関わる際、
セラピストも、
何を「意識」するのか、
どのような「意識」で
接するかなどで、

「同じ事実」でも「知覚」が変わり
「解釈」が異なってくるでしょう。

結果の出やすい「意識」の仕方は、
IAIR認定セミナーでも、
繰り返しお伝えしています。

それを習得された方は、
臨床で、より良い結果が
出せているようです。
最後に、
今、腰かけている方、
お尻はどんな感じがしますか?

その感覚は、
このメルマガを読んでいる間は、
感じていましたか?

「意識」というキーワード
奥が深いですね。

上手く、臨床、私生活に
活かしていきたいですね。

すべての人々のハッピーのために。

引用文献

その1:http://1.usa.gov/rpSmeO
その2:http://1.usa.gov/nRF75X
その3:http://1.usa.gov/rpRyjj

国際統合リハビリテーション協会
認定アドバンスインストラクター

複合的腰痛アプローチ
IAIR Lumber back Pain Technology(ILPT)主宰

赤羽秀徳

追伸1

ILPT腰痛治療セミナーでは、
痛みを聴くか? 行動を聴くか?の
具体的な方法を紹介し、解説しています。

追伸2

セミナーを受けた方からは、

「腰痛の考え方が180度変わりました」
「私の関わり方で、腰痛をつくりあげていた
かもしれないと気づきました」
との感想をいただいています。

追伸3

隔週金曜日に、
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